新しい「古典」を読む finalvent 全4巻
 

推薦のことば

この連載はいいなぁ。丁寧で、厳しくも優しい。
—— 糸井重里

やがて古典になる昭和・平成の名著を、有名ブロガーが全力で挑んだ書評集。名作は時代が生み出す。時代と作品と著者の人生——この三つが折り重なることで、異様なまでに切実な文章が立ち現れる。本を読む喜びを思い出させてくれる一冊。
—— 加藤貞顕(note代表取締役)

やがて「古典」になる本を読む

この本のタイトルにもなっている「古典」は、教科書に載っているような古典作品ではありません。戦後、とりわけ昭和から平成の時代に書かれた、やがて「古典」となっていくであろう作品を取り上げ、その真髄に迫る試みです。
 
本書は、2012年にウェブメディア『cakes』で始まった長期書評連載の書籍化。書き手は『極東ブログ』で知られる finalvent。古典から政治経済、地理・歴史、マンガ、音楽、料理まで、幅広い知識を独自の視点で綴ってきたブロガーが、昭和・平成の名著と正面から組み合います。

時代と作品と、著者自身の人生

本書の魅力は、単なる作品解説にとどまらない点にあります。著者は、その作品が書かれた社会背景、当時の読者がどんな気持ちでそれを手に取ったのか、なぜ多くの人の心に残ったのかを丁寧に読み解く。そして、そこに自身の人生を重ねていきます。ある作品を読んだときの年齢、そのとき抱えていた悩み、人生の転機。
 
「文学者や現代思想家の名前が喧伝されるときの、称賛の裏にある、没落した亡者たちの嫉妬の凡庸さの情念のほうに、むしろ真理のようなものがあるんじゃないのか」
 
極私的であると同時に丹念に作品を読み解く著者の手つきに、本を読むことの豊かさをきっと思い出すことでしょう。失われた名連載を復活させ、著者による書き下ろしも追加した待望の書籍化です。

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【新しい「古典」を読む 1】
【新しい「古典」を読む 2】
【新しい「古典」を読む 3】
【新しい「古典」を読む 4】

全4巻で取り上げる本

 

全4巻で取り上げる本の一覧
 

連載が生まれるまで

『cakes』でこの連載を企画したのは、当時同メディアを立ち上げた加藤貞顕さん(note代表取締役)でした。なぜfinalvent氏に依頼したのか、どんな原稿が届いたのか。企画者本人による回想を寄せていただきました。

加藤貞顕さんによる解説を読む

「古典」と聞くと、多くの人は明治・大正期の文学作品や、さらに遡って平安時代の作品などを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、戦後——とりわけ昭和から平成にかけて生まれた作品のなかにも、面白いものがたくさんある。そうした本が、やがて「古典」になっていくわけで、それを書評として記録しておくことには大きな意味があるのではないか。そう考えて、cakesという有料ウェブメディアを立ち上げた際にこの連載を企画した。

書き手として真っ先に思い浮かんだのが、当時ブロガーとして活躍していたfinalventさんだった。私は彼のブログを長く読んでいた。どういう人物なのかまったくわからないのだが、古典、政治経済、地理・歴史、など、さまざまな分野に幅広い知識を持っていることが文章から伝わってくる。

それだけではなく、マンガ、アニメ、音楽などのサブカルチャー、そして料理や家族のことまで、実に多彩な話題をブログに綴っておられた。「昭和や平成の面白い本を紹介する」というこの企画には、まさにうってつけの書き手ではないかと考えて、依頼をすることにした。

2012年の春のことだった。メールで連絡を取り、finalventさんの最寄り駅のデニーズで待ち合わせをして、企画の説明をした。そして、cakesが立ち上がった2012年9月から連載がスタートした。届いた初回原稿は、「TN君の伝記」の回だったが、想定以上のものだった。その後も、力のこもった原稿が次々と届き、楽しい連載期間を過ごさせていただいた。ウェブメディアは紙媒体と違って長さに制限がない。そのため、想定を大きく超えた長大な文章が送られてくることもあり、それがまた面白かった。

とくに力が入っている回は、もはや「暴走」と呼びたくなるほどの長さと熱量だった。とくに記憶に残っているのは『めぞん一刻』の回だ。高橋留美子のラブコメディを論じながら、finalventさんは自身の青春時代をも重ね合わせていく。作品論でありながら、同時にきわめて私的な告白でもある。一回では収まりきらず、複数回に分けて掲載されたが、その熱量は最後まで衰えなかった。村上春樹さんの作品では、『ノルウェイの森』や『ねじまき鳥クロニクル』を読み解きながら、時代の空気、社会の変容、そして自らの読書体験が渾然一体となって語られる。書評というより、ひとつの文学作品を読んでいるような気持ちになる。

本書の魅力は、単なる作品解説にとどまらない点にある。名作——やがて古典となるような名作は、時代が生み出すものだ。finalventさんは作品の内容だけでなく、その「時代」を丁寧に読み解く。作品が書かれた社会背景、当時の読者がどのような気持ちで手に取ったのか、そしてなぜその作品が多くの人の心に残ったのか。そこにfinalventさん自身の人生が重なっていく。ある作品を読んだときの年齢、そのとき抱えていた悩み、人生の転機。時代と作品と著者の人生——この三つが折り重なることで、異様なまでに切実な文章が立ち現れる。

書評集というジャンルの本は数多くあるが、これほど「書き手の体温」を感じる本は珍しい。取り上げられている作品を読んだことがある人は、新たな視点を得られるだろう。読んだことがない人は、きっとその作品そのものを読みたくなるはずだ。そして何より、「本を読む」という行為そのものの豊かさを、この本は思い出させてくれる。

—— 加藤貞顕(note代表取締役)

書誌情報

著者finalvent
巻数4
発行BANDIT
フォーマット電子書籍・ペーパーバック
ペーパーバック判型四六判
販売プラットフォームAmazon
Kindle Unlimited対応

各巻情報

新しい「古典」を読む 1

序文をはじめとする書き下ろしも加えた増補版。読みどころは、自身の青春時代をも重ねながら論じる高橋留美子『めぞん一刻』や、『風の歌を聴け』から『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』までを読み解く村上春樹論5編。作品論でありながら、同時にきわめて私的な告白にもなっています。

ページ数303
発行日2025年7月16日
電子書籍販売価格1,250円(税込)
ペーパーバック販売価格2,200円(税込)
ISBN979-8289337382
目次を見る
  • 序 『新しい「古典」を読む』ことの始まり
  • 1章 偉人と俗物——なだいなだ『TN君の伝記』
  • 2章 人間はこの地球上でどのように生きて来たのか?——ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』
  • 3章 青春を救う愛の祝福——高橋留美子『めぞん一刻』
  • 4章 名著に隠された絶望と光——ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』
  • 5章 青春における性のおののき——畑正憲『ムツゴロウの青春記』
  • 6章 ファインマンの抱えた地獄とユーモア——リチャード・P・ファインマン『ご冗談でしょう、ファインマンさん』
  • 7章 女が歴史とつながるとき——林真理子『ワンス・ア・イヤー』
  • 8章 凍結した魂の彷徨——向田邦子『思い出トランプ』
  • 9章 生を照らす汚辱の輝き——渡辺淳一『無影燈』
  • 10章 サブカルチャーにひそむねじれ——椎名誠『さらば国分寺書店のオババ』
  • 11章 センゼンの若者たち——五木寛之『風に吹かれて』
  • 12章 人生の豊かさとは——渡部昇一『知的生活の方法』
  • 13章 村上春樹の読み方(1)——『風の歌を聴け』
  • 14章 村上春樹の読み方(2)——『1973年のピンボール』
  • 15章 村上春樹の読み方(3)——『羊をめぐる冒険』
  • 16章 村上春樹の読み方(4)——『ダンス・ダンス・ダンス』
  • 17章 村上春樹の読み方・特別編——『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

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新しい「古典」を読む 2

マンガから社会学、数学、経済小説、料理、漢文まで、扱う本の幅がとりわけ広い巻。岩明均『寄生獣』に生命の必然としての痛みを読み、手塚治虫『アポロの歌』に性と死の予感を見る。なかでも忘れがたいのが、神谷美恵子『生きがいについて』の章です。巻末には書き下ろしの解説「「批評」ということ」を収録。

ページ数289
発行日2025年8月1日
電子書籍販売価格1,250円(税込)
ペーパーバック販売価格2,200円(税込)
ISBN979-8292109211
目次を見る
  • 1章 生命が持つ必然としての痛み——岩明均『寄生獣』
  • 2章 変わらない日本社会の構造——中根千枝『タテ社会の人間関係』
  • 3章 国家の精神を炙り出す試み——高橋和巳『邪宗門』
  • 4章 観察に基づいた科学的読み物——D・カーネギー『人を動かす』
  • 5章 数学的感性の真髄——山口昌哉『カオスとフラクタル』
  • 6章 笑劇としての戦争——小林信彦『ぼくたちの好きな戦争』
  • 7章 喪失からの回復という希望——神谷美恵子『生きがいについて』
  • 付記 神谷美恵子の謎
  • 8章 大義とロマン、その帰結——山崎豊子『不毛地帯』
  • 9章 国を失っても遺るもの——邱永漢『食は広州に在り』
  • 10章 ふたりのアウトロー——団鬼六『真剣師 小池重明』
  • 11章 大人になるということ——山田詠美『ぼくは勉強ができない』
  • 12章 奇譚に刻まれた生きることの軌跡——半村良『妖星伝』
  • 13章 伝記に秘められた若き日の痛切——山本夏彦『無想庵物語』
  • 14章 小林カツ代が日本に残してくれたもの
  • 15章 性に潜む死の予感——手塚治虫『アポロの歌』
  • 16章 いま漢文を学ぶ意義——加地伸行『漢文法基礎』
  • 解説 「批評」ということ

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新しい「古典」を読む 3

白眉は、開高健を二章続けて論じる部分。著者は開高健記念館で、『ずばり東京』から十八編が削り落とされていることに気づきます。未収録作はなぜ落とされたのか。代表作『夏の闇』へとつながる彼自身の体験とは何だったのか——執念深い追跡の果てに、削られた絶望の正体が浮かび上がります。巻末には書き下ろしの解説「テキストと年齢」を収録。

ページ数231
発行日2025年9月1日
電子書籍販売価格1,250円(税込)
ペーパーバック販売価格2,200円(税込)
ISBN979-8299378658
目次を見る
  • 1章 村上春樹の読み方(5)——『女のいない男たち』
  • 2章 暴力の時代を問い直す多声的世界——井上ひさし『偽原始人』
  • 3章 星新一が示した生の意味と無意味
  • 4章 異邦人として生きるということ——開高健『ずばり東京』
  • 5章 『ずばり東京』から削り落とされた開高健の絶望——開高健『夏の闇』
  • 6章 それでも愛の価値を信じるために——橋本治『恋愛論』
  • 7章 昭和という時代の陰画——吉本隆明『情況としての画像——高度資本主義下の「テレビ」』
  • 8章 イスラム社会への深い洞察——井筒俊彦『イスラーム文化——その根柢にあるもの』
  • 9章 思想という毒——岸田秀『ものぐさ精神分析』
  • 10章 純化する魂と巨大な矛盾——森有正『遙かなノートル・ダム』
  • 11章 「死の幸福」の中で人はいかにして生きるのか——田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』
  • 12章 『のだめカンタービレ』に仕掛けられた謎——二ノ宮知子『のだめカンタービレ』
  • 13章 豚のあぶらと故郷の味——古波蔵保好『料理沖縄物語』
  • 解説 テキストと年齢

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新しい「古典」を読む 4

完結巻には、青春と死をめぐる重い章が並びます。高野悦子『二十歳の原点』では彼女はなぜ自ら死んだのかという謎に正面から挑み、柴田翔『されど われらが日々——』では半世紀を超えて読み継がれてきた青春の蹉跌の正体を問う。コルンゴルトのオペラ『死の都』を複数の上演版の演出を突き合わせて論じる章は、この連載でも屈指の熱量です。

ページ数287
発行日2025年11月10日
電子書籍販売価格1,250円(税込)
ペーパーバック販売価格2,200円(税込)
ISBN979-8272215741
目次を見る
  • 1章 庄司薫は中村紘子『ピアニストという蛮族がいる』の中で再生した
  • 2章 詩人・黒田三郎の生涯をかけた愛の言葉——黒田三郎『詩の作り方』
  • 3章 彼女の存在の悲しみを問う神は——高野悦子『二十歳の原点』の謎
  • 4章 青年の心性を抉る「青春の考古学」——柴田翔『されど われらが日々——』の蹉跌
  • 付記 柴田翔のその後
  • 5章 故国を失った三人の少女——米原万里と『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
  • 6章 二十世紀最高の傑作オペラ、その無限の可能性——コルンゴルト『死の都』という文学
  • 7章 未完の小説『死ぬことと見つけたり』が描き出した「生の輝き」——隆慶一郎『死ぬことと見つけたり』
  • 8章 ローマ史を通じて知る歴史への向き合い方——塩野七生『ローマ人の物語』
  • 9章 『共同幻想論』が内包するエロスを私たちは自覚できるのか——吉本隆明『共同幻想論』
  • 解説 『新しい「古典」を読む』の思想的背景(本書編集者:坂田散文)

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著者略歴

 

finalvent
 
20年以上続くブログ『極東ブログ』の著者であり、アルファブロガー(2004年アルファブロガー・アワード)。1957年東京生まれ。本名、佐藤信正。ペンネームの由来は、子育ての最中に見ていた仮面ライダーの攻撃技から。国際基督教大学で聖書学を学んだ後、言語学を専攻。同大学院進学。技術・医療系のライターとしても本名で著書を出版。finalvent名義での著書に『考える生き方』(ダイヤモンド)。Webマガジン『cakes』で評論記事『新しい「古典」を読む』を連載。 現在は、中世英語聖書の研究者として活動するほか、京都芸術大学大学院生として平安時代の書道研究も行う。

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